〔7基の画法から3破の応法へ〕3破 調和力と熟成力
3破 調和力と熟成力
調和力とは一体何か
調和力を身につけるために
抽象画にも調和力は必要
抽象画を描いた時もこの「調和力」が必要になります。
こっち、ちょっと出すぎたかな。バランスを取るために逆にもアクセントを入れてみよう。とか。
あそこにこの色を入れたから、今度はこっちにも入れてみよう。とか
ここはあまりきれいにできなかったから、もう一回塗りなおそう。とか。
何度も絵を眺め、絵から聞こえてくる声に応えるために、筆を動かします。
何も描いていない抽象画こそ、バランスをとるため「調和力」が重要だとも言えます。
調和力の正体
私が生徒にアドバイスしていた時に考えていた「調和力」を言葉にするならば、「刺激」と「調和」のバランスです。
「調和」だけを重視していくと、絵は落ち着いてきますが、つまらない絵になってしまいます。
作者ならではの主張、「刺激」が入っていなければ、おもしろい絵にはならないのです。
大学で、石井武夫先生は絵は「変化」と「調和」が大切だ、とよく言っていました。
なるほど、と思って聞いていたものですが、
その後、私は「変化」より「刺激」の方を優先すべきでは、という考えに至りました。
「刺激」とは、作者の感情、感動、主張、個性、命。
その絵が存在しなければならなかった必然性のことです。
それが強力に表現されながらも、作品として「調和」されていることが重要だと考えています。
熟成力とは何か
「調和力」ともう一つ、私が重視しているのが「熟成力」です。
例えば、一枚の切り出した板があるとします。
このただの板でも「熟成力」があれば、何も描かず作品にすることができます。
やすりで磨き、ニスを塗り、またやすりで滑らかし、ニスを塗り重ね、深みを出していきます。
立派な、お金を出しても良いような工芸品ができあがります。
この制作は質感を重視した仕事ですが、他の要素(写実描写、色彩、構図)であっても同じことが言えます。
とりあえず、この技法で描きました。で終わりではなく、そこから画面とのやりとりを始めていきます。
しっくりくる瞬間まで、やりとりを続けていきます。
「なんかいい」と感じるまで続けるのです。
「いまひとつだな」という感じがしたら、何度でも描き加え、やり直します。
このやりとりの時間が「熟成力」です。
技法を熟成させる
「グレーズ技法」という、厚塗りの上に透明色を薄塗りする油彩技法があります。
専門的に絵を学んだことがある人ならば知っている技法だと思いますが、画面に自然と深みが出るので、身につけるとすごく風格のある絵に一気に進化します。
例えば、この「グレーズ技法」で描いた場合も、
とりあえずグレーズで描きました、で終わりではなく、そこから画面とのやりとりを行い、しっくりくる瞬間までやりとりを続けるのです。
何日間かかけて、何度かやりとりを続けていくとその瞬間が訪れます。
遠くから絵を見ても、写真に撮ってみても、もう手の入れようがなくなる瞬間。
この時が完成の時です。
ちょっと分かりづらい話になりますが、
例えば、グレーズ技法で描く人物表現を例にしても、2種類の表現方法があります。
(1)風合いを活かした人物の立体描画を重視するのか、
(2)人物をモチーフにした画面全体の風合いを重視するのか。
もちろん中間的な表現もありますが、
どこを到達点とするのか。
同じ人物表現であっても、「熟成」の意識の方向性によって、絵は違う雰囲気のものになっていきます。
それほどに「熟成」への意識は、絵の完成形を変えてしまう力があるのです。
何を熟成させたら良いか
今の「グレーズ技法」の例で言うと、「熟成」させていたのは、「絵肌」と「写実的人物描画」ということになります。
これらの二つの要素が、バランス良くハマった時が、絵が決まった瞬間です。
「何か違和感を感じるんだけど、何なのかなあ...」という時こそ、私の「7基の画法」を思い返してください。
「7基」の一つ一つが十分なものなのか、チュックしていきます。
輪郭線の欠陥なのか、写実の不自然さなのか、色が合わないのか、構図が悪いのか。
その違和感を感じる原因は、「7基」のどこかに「欠陥」があることによります。
「7基の画法」はそのヒントをあなたに与えてくれ、
自分自身の中に「先生」を作り出してくれます。
制作中に自分自身に聞いてみてください。
「先生、これでいいですか?」
あなた自身が自分に「いいよ」と言ったり、自分自身にアドバイスをしていくのです。
この自分の中のもう一人の先生こそが、「7基の画法」を身につけた人だけ到達し、体得できる「調和力」・「熟成力」なのです。
3破 調和力と熟成力 の実例

具体例1
ここでは、実例を紹介します。

具体例2
ここでは、実例を紹介します。

具体例3
ここでは、実例を紹介します。