〔7基の画法〕1基 輪郭線

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1基 輪郭線

輪郭線は一本にしぼる

 
輪郭線(主線)は一本にしぼって描きます。
絵がうまくない人の輪郭線を見ると、何本も迷った線が残っていて、線がしぼりきれていないことがわかります。
途中で何本も線が出てきてしまうことは構いませんが、その線を一本にしぼることです。
では、どの線を残せばいいのか。
それは、自分が一番気持ちの良いと感じる線です。
中村祐介

A

B

画像は、一番上のイラストレーター中村祐介さんの絵を、二人の高校生が模写したものです。
 
Aの生徒は、かなり良いところまでいっていますが、線が何本の出てしまっていて、一本にしぼりきれていません。
線自体も弱々しくあいまいなままになってしまっています。
ここが改善できると、形などは良くとれているので、もったいない感じです。
 
一方、Bの画像の生徒は、線が一本にしぼられ、筆圧が一定になっていることが分かります。
とてもすっきりと見やすい絵に仕上がっています。
 
このように線をしぼって描く練習をすることで、画力は飛躍的に向上します。

ゆっくり輪郭線を決める方法

 
少しずつ形をとっていく方法があります。
サッサッサッと線を試すように描き進める方法です。デッサンの輪郭線を描く際、このような動きをすることが多いです。
この場合にも、最後は一本の線にしぼることを心がけます。
何本も線を描くことで、なんとなく雰囲気が出るような気がしますが、最初はそのようにごまかさないことです。
何本も出た線の中から、最後一本にしぼること。これが極意です。
このように線をしぼる意識を持つことで、本当の線を見つける癖がつき、格段に絵は上達していきます。

一気に輪郭線を決める方法

 
他に、一気に輪郭線を決める方法があります。
この方法は、迷いなく始点から終点まで一気に輪郭線を引っぱる方法です。
ですので、先ほどのような、何本もの線は生まれません。強めの線が一本残るのみとなります。
線を修正する場合には、一気にその線を消し、また一気に描きます。
メモに添えて描くような、「ちょこっとイラスト」が得意な人は、このように強い線で線を決めるのがうまい人です。
先ほどの「ゆっくり決める方法」と、どちらの方法が良いとは言えませんが、自分に合ったどちらかの方法で、線を決めていくように心がけてください。

形をとる時は弱い線で

 
実際描く時、例えば自分の全身を描こうとする時、鉛筆で薄い線で描き始めます。
ここは頭、ここは体、この辺りに手足を描いて、というように薄く描いて全体の位置を決めます。
この時から濃い線で描いてしまうと、直すことが難しくなってしまうからです。
だいたい全体のバランスが決まってきたら、線を決めていきます。
全体的に薄く弱かった線を、少し強めの線に決めていくようにします。

筆圧一定

 
絵のうまい人と、そうではない人の絵を見比べると、筆圧にも特徴が見られます。
筆圧が強い方が良いとか、弱いとダメ、というわけではありません。
うまい人は筆圧が一定であることが分かります。
髪の毛や手、自信がないところになると、俄然筆圧は弱くなってしまいます。
顔を描く時は筆圧に自信が満ちあふれているのに、体を描く時は弱くなってしまう人もいます。
苦手な部分を描く時も、筆圧は一定になるように調整していきます。
こうすることで、ずいぶん見やすい絵になっていくでしょう。

丸線、太線、強弱線

 
絵やイラストを見ていくと、それぞれの作家が、それぞれの線のスタイルを持ってことが分かります。
 
極端な例で言えば、「リラックマ」や「ぐでたま」のようなゆるキャラは、太くて丸い線で描かれていることが想像できるでしょう。これは、かわいらしさを出すために、そのような線で描いています。
 
リアルに近づけるためには、逆に線は細くします。
 
また、大人びたカッコ良さを出すためには、強弱線を使います。強弱と言っても、ここでは筆圧のことを言うのではなく、輪郭線の幅を太い細いを作ることを言います。
一本の線に決まったら、左右に線を広げていく感じで、線に幅を持たせていきます。
ポイントは、形同士がぶつかりあうところは、線同士をピタッと合わせ、幅を太く強調することです。ここは、線同士が突っ切ったり、逆に離れてしまってはいけません。これを「タメのライン」と言いいます。
髪の毛の先などは、針の先のように細く抜きます。丸くなってしまうとかっこ悪くなってしまいます。これは「ヌキのライン」と言います。
この「タメ」と「ヌキ」を使いこなすことで、線画は格段に上達していきます。
 
漫画家は、ザッザッと線が何本を描かれたような、味のある絵を描きます。
私が好きな井上雄彦先生も、そのような勢いのある線で描くことがあります。
しかし、初心者の方はマネしない方が良いです。これは、一本線で描けるようになった次の段階でやることです。
まずは、線をしぼる練習をすることです。
 
一本の線から、何本か線がとび出てしまうような「ヒゲ」のある線ができてしまったら、線を中に収めます。
とにかく、一本の線の中で太い細いを作るのです。
 
線に幅を作っていく作業は、やはり線が決まっていることが前提です。
形が決まらないままこの作業に取りかかってしまうと線の修正ができなくなってしまうためです。
 
薄い線で全体を描く→線を一本に決める→線に幅や強弱を作る、という順番を守っていってください。

輪郭線を使った絵の練習方法

 
カンバラクニエ
 
輪郭線を使った絵の練習は、まず模写から始めると良いでしょう。
 
この絵はカンバラクニエさんの絵です。輪郭線には太い細いをつける強弱線の特徴があり、絶妙な線の使い方は大変勉強になります。
右の絵はその絵を高校生が模写したものです。
 
まずは、全体を薄い線で描き始めます。
次に、線を一本に決めます。
線が決まったら、その線に太い細いをつけていきます。
この時、形同士のぶつかる「タメ」、毛先などの「ヌキ」を意識して描いていきます。
 
おしばなお
 
次に写真を使って練習していきます。
先ほどを同じ高校生が、描いたものです。
 
写真には線が存在しません。自分で線を形作らなければなりません。その時参考にするのが、前に模写に使った絵です。線のしぼり方、強弱のつけ方を参考に描いていきます。
けっこう迷うのが、目の描き方、髪の毛の描き方なのですが、自分の好きな絵を参考にすると良いと思います。
注意することは、線の練習のために陰を塗らないこと、服のしわは一ヶ所2〜3本に省略すると見やすい絵になります。
 
どうです?カンバラクニエ風のプロっぽいイラストに仕上がったと思いませんか?
こうして、線の作り方を模写して学び、写真で再現する練習を積んでいくことで、どんどんいろんなものを描けるようになっていきます。
皆さんもチャレンジしてみてください。

3Dを線画に落とし込む歴史

 
私達の視界に見える風景も人物も、線にはなっていません。
実は、「3Dの世界をいかに線画に落とし込むか」というのが、日本絵画の歴史と言っても過言ではないのです。
 
例えば江戸時代の大作家、葛飾北斎の版画も細い輪郭線で描かれています。東洲斎写楽の浮世絵も、細い輪郭線で描いています。「鉄線描法」という細い線で描く方法で、江戸時代の作家達は、自分の身の周りの情景を描いてきたのです。
 
手塚治虫先生以降の漫画も線で描かれています。
アニメーションも輪郭線も使って表現します。
その一本の線に注目してみてください。
 
歴史を振り返る時、「線でどう表すか」という作家達の試行錯誤の歴史が浮かび上がってきます。
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1基 輪郭線 の実例

強弱線イラストの描き方

動画で強弱線イラストの描き方を実演しています。

 

ハッチング描画法

井上雄彦先生の画法を例に、ハッチングの方法を解説しています。

 

具体例3

ここでは、実例を紹介します。