〔7基の画法から3破の応法へ〕2破 デフォルメ

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2破 デフォルメ

デフォルメとは何か

 
「デフォルメ?聞いたことないよ」っていう人も多いのではないかと思います。
美術以外に使うことはほぼない単語です。
 
しかし、「デフォルメ」無しには美術は語れないほど重要な用語です。
例えば、日本の漫画やアニメーションに出てくるキャラクター。
やたら目がでかいですよね。
もしあんな人が日常にいたら、正直怖いです。
足の長いキャラクター。あれも日常にいたら、まるで妖怪手長足長(この妖怪知ってますかね?)です。
しかし、漫画やアニメの世界では不自然さを感じず、キャラクターの個性として認識されます。
 
このように、わざと人物像の一部を誇張して表現することを「デフォルメ」と言います。
つまり、日常では見られない人物を描くことで、より印象的に、脳に引っかかるように描くことが、昔から行われてきました。
 
「漫画でもアニメでもイラストでもない、純粋な美術にそんなものを持ち込む必要はない!」と、写実崇拝者の方々の中には怒ってしまう人もいるかもしれません。
しかし特に漫画・アニメ文化の発達した日本では、「デフォルメ表現」はもはや無視できない表現文化の一つの流れとなっています。
「デフォルメ反対」の写実主義の人も描けるように技術を習得してから、やはり写実表現に戻る、というのも良いのではないでしょうか。

「デフォルメ」は印象の誇張表現

 
なぜ、「デフォルメ」が必要かというと、印象を重視した誇張表現だからです。
 
あの人は目が大きくて美しい人だった、という心の動きを、より大きな目を描くことで表現します。
実物のコピーではなく、感動の描写を行なっているということです。
見た人には、その感動を「大きな目を描く」という視覚で伝えていきます。
 
実物のコピーは、何も感じていないのといっしょです。
そこに自分の感動と解釈があるからこそ、美術表現は成り立っているのです。
 
実物とは少し異なるが、自分としてはこの形がしっくりくる。
その形を追い求めてみてください。
何度描いてもその形に落ち着いてしまう。
それがあなたの理想形なのです。
 
時には、もっと大胆な形の変化をつけて見てください。
それがなぜか、グッとくる形ならば、それで良いのです。
 
無理やり形を変化させる、というよりも、「自分なりの快い形を追い求めていくこと」にデフォルメ表現の醍醐味があります。

「デフォルメ」への驚き

 

私が美術表現で「デフォルメ」に心動かされたのは、国展の開光市先生の絵を見たときです。
 
ちょうどその頃の私は、自分の個性とは何か、と考えていた時期でもありました。
自分の感性をどこまで信じていいのか、そんなことも考えていました。
開光市先生の絵は、まさにその答えをくれたような絵でした。
こんな歪んだリアルに汚れた人間でいいんだ、それが人の心をつかむんだ、と。
 
人物は歪み、折れ曲がっている、しかしそれは決して狂気ではなく、人間の真実を描いているように感じたものでした。
 
それと同時に、湧き上がってきた疑問は、「どうやったら、こんな人物像を発想できるんだ?」ということです。

後に、画面のシミのような形態から人物を描き起こしていることが分かりましたが、当時は「こんな人物を描けるなんてすごい!」と憧れしかなく、私を自然に国展への出品へ導いてくれた作家の一人でした。
 
一方、書店や図書館では、玉川信一先生の絵が載っている本が多く出回っていて、開先生のようなアクロバティックな人物像ではありませんでしたが、自分の心情にリンクするような心象風景に登場するデフォルメ人物像にもまた、感動していました。
とてもマネできないような重厚なマチエール(質感)で描かれたその人物像は、異世界へと私を導いてくれました。

また、大学の同期には日野之彦くんもいて、ビックリするような大胆な人物画を、瞬く間に完成させては大量の作品を描いていました。
 
大学での玉川先生と日野くんとの出会いは、大きな影響があったと感じています。

デフォルメへの陰影のつけ方

 
デフォルメした人物像の形はできたけど、陰影はどうつけたらいいのか?
そんな疑問を持つ人もいるでしょう。
 
答えは、「似たような写真を見ながら陰をつければ良い」ということです。
形は描けても、確かに陰影は難しいでしょう。
その時は、写真資料を見ることです。
 
普通の人の脳は、陰影までも記憶するようにはできていません。
ゆがませた形に沿って、写真を見ながら陰影をつけていくのです。
 
意外と違和感なく、塗れてませんか?
最初は明暗は写真にそろえると良いです。
 
そのうち、玉川先生や日野くんのように、何も見なくても陰影をつけられるようになりますが、まずは写真を見ながら陰影を描き、人物の明暗のパターンを覚えてしまうまで描き続けることです。
 
凡人が天才に近づくためには、まずは彼らの思考自体を紐解き、それをできるようになるまでトレーニングし、自分の中に刷り込んでいくことです。

2破 デフォルメ の実例

具体例1

ここでは、実例を紹介します。

 

具体例2

ここでは、実例を紹介します。

 

具体例3

ここでは、実例を紹介します。

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